思わず物陰に隠れた。側を通る見知らぬ人の目線がイタイ。 |
少しずつ僕たちは、
じっとして、隠れた原因が視界から消えるのを待った。こっそり伺う視線の先にはよく似た顔がふたつ。造作はとても良い。でも別に自分にとって彼らの顔が綺麗だろうが芸能人と一緒だろうが全く関係が無
く。 (早く居なくなれ…!!) 俺はただただそれだけを念じ続ける。 「こんな所で何挙動不審者やってるの?」
回り込んで俺を見下ろしたふたりは抑揚のない声で口々に言う。頭に来るけれど、ここで怒っていたのでは始まらない。俺は隠れるのを止めてちゃんと立った。やっぱりそれでも、ふたりの目線は俺の上にあるからむかっとする。俺の成長期を嘲笑うかのように俺以上の成長期であっという間ににょきにょきと伸びやがって。 「訊きたいのは俺の方だこの双子め。」 前髪が中分けになってる方が悠太と言う。そして、もう片方が祐希。 「何でこんな所うろうろしてるの?あんた達この辺は縄張りじゃないでしょ。」
ふたりの高校からは遠く離れているここは、俺の高校が近い。俺と同じ制服の生徒は歩いてても、ふたりと同じ制服なんてどこにも見当たらない場所だ。 「を探しに来たんだから、縄張りの外にいるのは当たり前でしょ。」 悠太が当たり前のように言って、祐希が頷く。俺はふたりに引き摺られながら瞬きした。 「どうして」
ふたりとは何の約束もなかったはずだ。携帯のメールや電話は時々あるけど、それでも「今度会おう」なんて言った覚えはない。家族ぐるみの夕食会か何かかとも思うけど、両親がうきうきと計画していた予定日はもっと遠かった。 「探しに来ちゃ駄目なの?」 何となくほっとして溜息を吐けば、祐希がじっと俺を見てる。 「でも、普段ここまで買いに来ないのはだって知ってるでしょ。」
じゃあ何でだよ、と言いたくなるのをぐっと堪えた。兎に角マイペースの双子達は、捲し立てるように質問したところで望む答えをくれやしない。引き摺られるままに歩きながら、俺は必死に頭を動かした。 「あーあ、もう。分かっちゃいるけどここまで鈍いとやんなっちゃうね。」
さっぱり答えが出ないまま足ばかり動かしていたら、祐希の呆れた声が耳に滑り込んでくる。顔を上げるといつの間にか家の近くまで来ていて、ふたりの顔が揃って俺を見下ろしている。 「悠太さん言ってやって。」 (おまえらもよく知ってる顔だよ…!!)
この期に及んで結論の発言を譲り合っているふたりに思わず声を荒げれば、刺すような視線とわざとらしい言葉で攻撃されてしまった。ここで言い返すことも勿論できるけど、これ以上話をだらだら続けてても時間の無駄だし、ご近所で要らぬ注目を浴びることは避けたい。 「」
溜息と一緒に悠太が言って、俺の頭上で祐希と目配せをする。俺の腕を放した祐希は、先に歩いて行ってしまった。方角的に俺の家だろう。母さんに挨拶でもするんだろうか、それとも、おやつを用意しておいて貰おうとしてるんだろうか。 「オレたちさ、」 ゆっくり、悠太が切り出す。 「今年で17になるわけじゃない?」
高校2年生、これまで人生波風なかった訳だから17以下でも以上でもない。悠太の視線が気まずかったので、大人しく頷いた。 「そろそろ、次のステップに進んでも良いんじゃない?って祐希と話し合ったわけ。わかる?」
落胆した、と言うよりも、再確認したとでも言いたいような口調だった。鈍感鈍感といわれて嬉しいわけがなく、俺は眉間に皺を刻む。 「悠太、何が言いたいの?」
口の端だけで微かに笑った悠太は、掴んでいた腕を放して俺の頭を優しく撫でた。普段のちょっと近寄りがたい雰囲気がいきなり崩れて、一気に優しくなる。不覚にも俺は、少し鼓動が跳ね上がるのを認めてしまった。
「約束を取り付けてなくても、家族で会いに行ったり来たりする時じゃなくても、学校が違っても。会いに来ても良いでしょ?」
それが次のステップなのか、なんて、訊くことも出来ず。俺は盛大に視線を彷徨わせて、口を開閉させた。久しぶりに聞くような気がする、悠太の気持ちのこもった暖かい声にどう返したらいいのか分からない。どう答えれば正解なんだろう。 「オレも祐希もに本当はもっともっと会いたいんだもん。」 偶に、ほんの偶に、ほんのちょっぴり。長く会っていないと、寂しいとか遊びたいなとか思う。 「だからさ、早速会いに来たよ。」 本当は、放課後学校を出て最初の角を曲がるまでいつものメンバーで寄り道するつもりだったから。 「俺…」 小さく、ふふ、と悠太が笑ったような気がした。 「いつも通りで良いんだよ、はさ。あとはオレ達に任せておいて。」 おばさん、駅前で買ってきたケーキ出してくれるんだって! |
(061004)
君と僕。は双子が好きです、やっぱり。
微妙な感じが伝われば。
(いつだって微妙なのばっかりだけど!)(…)